原田左官ブログ

左官の技術を向上させる方法とは?キャリアアップのために覚えておきたいこと

左官の技術を向上させる方法とは?キャリアアップのために覚えておきたいこと

投稿日:2023年08月07日 (月)

塗り壁トレーニング中の左官見習い職人さん達

左官職人にとって高度な技術と専門的な知識は大きな武器になります。
これらを身につけておくことで、会社のなかではキャリアアップにつながるほか、将来的には独立の夢を果たせる可能性もあります。

では、左官職人として技術を向上させるためには、どういった方法が効果的なのでしょうか。

左官技術を向上させる方法

天井を塗る左官職人さん

左官職人として技術やスキルを向上させるためには、さまざまな方法があります。なかでも代表的な6つの方法を紹介しましょう。

職人から技術を継承する

もっとも多いのが先輩の職人や親方などから直接技術を継承する方法です。
左官職人のなかには、知識や経験、スキルがゼロの未経験から業界に飛び込む人も少なくありません。
そのような場合、先輩や親方から仕事の基礎を教えてもらうことがほとんどです。

具体的には、左官の作業に必要なコテや緑長、ブラシ、トロ舟などの使い方や、セメントやモルタルの均一な塗り方、補修方法など多岐にわたります。
また、左官職人として基礎的な技術やスキルが身についてきたら、レベルに合わせてさらに高度な技術も学んでいきます。

研修やセミナーへの参加

長年にわたって身につけた経験や技術をさらに磨き上げることも大切ですが、それと同時に新たな技法や知見を学ぶ姿勢も左官職人には求められます。

そこでおすすめなのが、研修会やセミナーなどへの参加です。
工事会社や公的団体などのなかには、左官職人を対象とした研修会や勉強会、セミナーなどを定期的に実施しているところもあります。
このようなイベントに参加することで、最新の技術や知識を習得することができます。

また、研修会やセミナーへ参加することの意義は、単に座学による知識を身につけるだけではありません。
これらのイベントには多くの左官職人が集まっているため、他の職人と交流する貴重な機会にもなります。
横のつながりができることで、建設業界全体の動向やトレンドを把握したり、顧客ニーズがどのように変化しているか意見交換もできます。

正しい鏝使いを覚える

左官の仕事は正しい鏝使いを覚えることが基本です。正しく鏝が使えないとモルタルや漆喰の仕上がりにムラができるなど見た目の美しさにも影響が出ます。
正しい鏝使いをマスターすることは左官職人の基礎ですが、材料が薄塗り、厚塗りと種類があり、作業も床作業、壁作業と幅が広いため、覚えるまでにはある程度時間がかかります。
正しい鏝の使い方と材料に合った鏝を揃える知識も必要になります。

最新の技術・技法に関する情報収集

左官という仕事そのものは古くから存在していますが、より効率的に美しく仕上げるために左官技術は年々進化しています。
上記で紹介した最新のツールや道具はもちろんのこと、塗布する材料であるモルタルや漆喰の技術開発も盛んに行われています。

たとえば、従来に比べて耐荷重性に優れたフィニッシュモルタルなどの素材もあります。
本来、モルタルは圧力が加わることで潰れやすい特性がありますが、モルタルに配合される素材の割合を変えることにより、大きな荷重が加わっても潰れるリスクがありません。

日々の業務に忙しいなかで、このような最新の技術・技法を学ぶことは決して容易ではありません。
そこで、上記でも紹介した研修会やセミナーなどに参加したり、インターネットで情報収集したりといった習慣を身につけるなど、効率的に学べる工夫を心がけましょう。

専門的な資格の取得

資格の取得は左官の技術を向上させるために有効な方法の一つです。
日々の業務を通してスキルを向上する方法もありますが、それだけでは身につけられる知識やスキルも限定的になりがちです。

しかし、資格取得には基礎的・応用的な技術や知識を習得するためのトレーニングが含まれているほか、安全管理や関連法規といった専門的な内容も少なくありません。
資格取得に向けた学習を継続することで、それまで知らなかった新たな知識や技術を効率的かつ体系的に身につけられるでしょう。

また、現在の会社でキャリアアップを目指したり、転職や独立を目指すにあたっても大きな武器になるはずです。

継続的な実践

左官という仕事は単に知識を身につければ良いというものではなく、実践に役立てて初めてスキルアップにつながります。
例えば、最新の技術や技法を学んでも、実際に手を動かした時に上手く作業ができなければ、腕の良い左官職人とはいえません。

そのため、知識を得るだけでなく、出来るだけ手を動かして優れた技術を体に叩き込んで覚えることが重要です。
これは初級者から中級者、上級者まで、あらゆる左官職人に共通していえることであり、実践を通して職人としての腕を研ぎ澄ませていくことが何よりも求められるのです。

左官技術の向上に役立つ資格

壁を塗って仕上げる左官職人さん

左官の技術を向上させるために、明確な目標があったほうがモチベーションの維持・向上に役立ちます。
そこでおすすめなのが、上記でも紹介した専門的な資格に挑戦してみることです。

左官関連の資格としては、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。代表的な3つの資格を紹介します。

左官技能士

左官技能士とはその名の通り、左官技術を認定する国家資格です。
1級から3級までのランクが存在し、左官業務の経験がありスキルアップを目指す方には2級または1級の受験がおすすめです。
1級の受験資格としては7年以上の実務経験、2級は2年以上の実務経験が条件となっているため、レベルに応じたランクに挑戦してみましょう。

また、実務経験が短い初級者の場合には、実務経験の有無が問われない3級から挑戦してみるのがおすすめです。
左官技能士は学科試験と実技試験の双方に合格することで認定されます。

学科試験では建築構造や材料に関する知識、安全衛生や関連法規といった専門的な内容が出題されます。
また、実技試験では実際の左官作業を想定し、墨出しからモルタルの調合、下塗りおよび上塗り作業などが対象となります。

学科試験・実技試験ともに100点満点で採点され、学科は65点以上、実技は60点以上が合格ラインとなっています。

登録左官基幹技能者

上記で紹介した左官技能士は、あくまでも左官職人としてのスキルを客観的に証明するための資格です。
これに対し、さらに上位にあたる試験として位置づけられているのが登録左官基幹技能者です。
登録左官基幹技能者も国家試験のひとつであり、これをもっていれば左官職人としての基礎知識や高いスキルだけでなく、現場の管理者や監督に求められる能力も証明できます。
ただし、登録左官基幹技能者を受験するためには以下の条件を満たしている必要があり、決して簡単ではありません。

【受験資格】
以下の条件を満たすこと
 1. 以下いずれかの資格を持っていること
  1級左官技能士
  1級建築施工管理技士・2級建築施工管理技士(仕上げ)
  職業訓練指導員(左官職種)
  優秀施工者国土交通大臣顕彰者
 2. 10年以上の実務経験者
 3. 3年以上の職長経験者
 4. 職長・安全衛生責任者教育修了者

施工管理や工程管理、資材管理といった専門的な内容が多く出題されることから、十分な試験対策が求められます。

タイル張り技能士

タイル張り技能士とは、壁や床へタイルを張る作業の品質や技術を客観的に証明する国家資格です。
左官作業の現場によっては、単にモルタルを塗布するだけでなく、デザイン性を高めるためにタイル張りの作業が求められることがあります。

タイル張りと聞くと単純な作業に思われがちですが、実際にはモルタルを均一に塗布し、その上からタイルを規則正しく仕上げるために繊細な作業が求められます。
タイル張りの経験がない作業員が行うと、タイルが全体的に傾いたり、一部が曲がったりすることも少なくありません。

そこで、タイル張り技能士の資格を取得することで、リフォームや補修作業などの現場で重宝されます。
左官技能士と同様、こちらも1級と2級が存在し、1級の場合は7年以上、2級は2年以上の実務経験が受験の条件となります。

試験は学科と実技の両方があり、学科試験では施工法や材料、製図、建築構造、関係法規などが中心に出題され、実技試験では実際の現場を想定したタイル張りの作業を行います。

左官技術を向上させ自分自身の武器にしよう

鏝板に材料を乗せて鏝で壁を塗る左官職人さん

左官技術を向上させるためには、上司や親方、先輩の職人から技術を継承する方法以外にも、研修会やセミナーへの参加、自ら最新の技術や技法を学ぶなどさまざまな方法があります。
効率的に幅広い知識を吸収しスキルアップを果たすためには、専門的な資格取得に挑戦してみるのもおすすめです。

いずれにしても、左官職人として成長していくためには、継続的に実践を繰り返し高度な技術や技法を体で覚えることが大切です。
日々の仕事を淡々とこなすだけでなく、少しずつでも良いのでスキルアップにつながる行動を習慣づけるようにしましょう。


この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

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