版築について
版築について
版築について(原田宗亮)
今回は、版築についてお話をさせていただきます。
版築とは、壁や基礎を作りたい部分に両側から板などを当て枠を作り、
その中に土などを詰め、しめ固めて構築することを言います。
動画:信楽トリエンナーレ・版築による土のアート椅子(ベンチ)
土を練って扱うため、比較的容易に作成する事ができ、原始的な工法とも言われています。
中国でも、万里の長城の城壁に版築が用いられており、非常に古くから用いられている技法です。
工法が原始的なため、左官の技法なのか?というご意見もありますが、
土を練る作業や叩きしめる作業(三和土仕上げにおいて)が左官がなれているため、
また、綺麗な版築の表情を作ることを左官が理解していることが多いため、
左官工法として認識されています。
本来の版築は土に強度を出すため、
小石や石灰またはニガリを配合し、それをつき固めたものを指しますが、
現在では強度を求めるため、普通セメントを配合することも多くなっています。
(それは本来の版築からは外れている、版築ではなく土コンクリートだという意見もありますが、私の意見としては、現在版築が注目されているのは意匠的な部分が求められていることが多いので、土の風合いを殺さない範囲でセメントを混ぜて強度を出すことで版築が広まることはよいことだと思っています。)
現在見られる壁としては有名なものは法隆寺の築地塀があり、
他にもお寺では各地に版築が残っています。
最近作成された版築の大きな壁としては愛知県のINAX土・どろんこ館があります。
INAX土・どろんこ館
http://www1.lixil.co.jp/clayworks/
また、作業的には容易な部分が多いため、版築のワークショップも多数開かれているようです。
ただし、コンクリート打ち放し仕上げと同じように、枠をバラしてみないと仕上がりが分からないため、
非常に高い仕上がりの精度を求めるのであれば、プロにまかせることがお勧めです。
版築の壁がなぜ、今注目されているかというと、
土が層をなしている表情が素朴な味わいを出していることが好まれている、
土の枠を当てていたつるっとした質感がよい、
コンクリートなどに比べ柔らかい表情を持っている、など、
版築でしか出ない味わいが多くのファンを生んでいるようです。
版築風の壁について
版築の風合い・素朴な土の表情が好まれ、様々な場所で版築壁を作りたいという要望が増えたため、
普通セメントを混ぜて表面部分を版築の表情に仕上げた版築風の壁が近年になり考え出されています。
本来の版築はそれ自体が自立する壁になるため非常に分厚い壁にする必要があり、
土も大量に練るため、重量が出てしまいました。
また、土の乾燥を待つ必要があるため、型枠をばらすまでに時間が掛かってしまっていました。
そういった版築の欠点を解消するため、
コンクリート下地やベニヤ下地に対して30~50cm隙間を作り、
型枠を作って土を流しつき固めることで、
今までよりも簡易的に版築の壁を作ることが出来るようになりました。
版築は本来、塀など外部に使用されていましたが、
版築の欠点を解消した現代工法により、
現在では店舗のディスプレイ、マンションのエントランスの壁にも多く使用されています。
ここで版築壁と版築風壁の比較をして見たいと思います。
版築 | 版築風 |
それ自体が自立する壁である | コンクリート等の壁の上に仕上げる |
重量がある | 版築に比べて重量が無い |
プロが施工すると高価になりやすい | 版築よりは安価になる |
塗り版築仕上げ
版築仕上げ・版築風仕上げは1段1段つき固めて仕上げていくため、
土の層の味わいのある仕上がりになりますが、その分非常に手間と時間が掛かります。
そのため、現在では鏝塗りで版築の表情を出す仕上げ工法も考案されています。
版築でつき固める層を、鏝で一層ずつ塗り積み上げていくことで、
版築の表情を再現するという工法です。
鏝塗り仕上げのため、型枠がいらず、今までよりも簡単に版築の壁を表現することが出来ます。
鏝塗りで層を塗り分けていくため、今までよりもより様々な場所で使用可能になり、
版築の表現の幅が広がっています。
武蔵小金井の什器の例
天井からの下がり壁・吊り下げ什器に施工した例。
このように型枠工法では不可能な場所にも版築風の壁を施工することが出来ました。
鏝塗り施工のため、使用材料も幅が増え、カラフルな版築を作ることも可能になりました。
本来の版築からは離れてしまう部分もありますが、
版築の発展系として捕らえていただければと思います。
土の風合いを生かした版築、それを発展させた塗り版築仕上げ。
是非、仕上げバリエーションの一つとしてご検討いただきたいです。
塗り版築 施工例などはこちら
Webカタログ:塗り版築
https://www.haradasakan.co.jp/webcatalog/webcataharada/webcatanurihan/
最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
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