塗り壁とカビについて
塗り壁とカビについて
塗り壁とカビについて
今回は塗り壁とカビの関係についてお話させていただきます。
※2022.04.25更新:トップコートについて加筆修正致しました。
近年、珪藻土や漆喰などの天然素材による塗り壁が多くなるとともに
問題が出てきているのがカビの発生です。
具体的には、
内壁に珪藻土を塗ったけれどカビが生えてしまった。
そして、
外壁に漆喰を塗ったけれどカビが生えてしまった・・・・と言うようなトラブルです。
結論から先に申し上げますと、
防カビ性能をうたう塗り壁材であっても一定の条件が揃うとカビが発生します。
まずはカビが発生するメカニズムを簡単に説明させていただきます。
カビの元となる胞子と呼ばれる原因菌は、目に見えませんがいかなる場所にも無数に浮遊しています。
それら胞子が湿度・温度・栄養・酸素の条件が整う事によって一気に繁殖します。
その結果、私たちが見るカビとして姿を現します。
天然素材の塗り壁の代表格である珪藻土や漆喰には、
室内の湿気を吸ったり吐いたりする「吸放湿性能」と言う特徴があります。
この特徴から、
珪藻土や漆喰がカビの大敵である湿度を吸ってくれるのでカビの発生を抑制すると謳われることが多いです。
実際、これは正しいことです。
しかし室内の湿度を吸う事で室内環境は良くなるのですが、
ここで注意しないといけないのが「吸放湿性能」の「放」の部分、
つまり「吸った湿度を吐かせてあげなければいけない」と言うことです。
カビが発生する条件として一番影響があるのは湿度です。
珪藻土や漆喰に限らず、天然素材である塗り壁は湿気を吸います。
ただ、吸ったままではいけません。
それらを吐かせてあげないと、カビの原因になる湿度をずっと蓄えたままになり、
そこにカビの胞子が付着し、限界量を超えてカビが発生します。
湿度を吸ったままの状態にせず、吐かせてあげる事も重要です。
具体的にはこまめに換気をすることです。
近年の住宅・建物は機密性が非常に高く、カビにとっては非常に好条件になります。
玄関・寝室・脱衣所・北側の部屋は特に注意が必要です。
これらの写真は珪藻土に発生したカビです。
写真提供:四国化成「カビストップ」
材料の特性として珪藻土自体にはカビの抑制効果はありません。
珪藻土の材料の特性としては中性に属し、
湿気を吸いますが材料自体でカビを止める事は出来ません。
しかし、各材料メーカーは対策をして、カビが発生しづらい材料を加えることでカビ対策をしています。
具体的には珪藻土に漆喰を混ぜるということをしているメーカーが多いようです。
漆喰は強アルカリ性という特徴を持ちます。
この強アルカリ性は殺菌作用を持つレベルで、結果的にカビの発生を抑制する働きがあります。
珪藻土建材が生まれる前から日本の家屋で主に押入れなどで漆喰が使用されるのは
カビに強いからです。
自ら硬化する性質の無い珪藻土を漆喰で硬化させるのです。
上記の材料のみで対策は材料でのカビの発生を防ぐ方法ですが、完璧ではありません。
カビが発生しづらい成分の壁でもカビが生えることがあります。
それは、汚れです。
特に外壁ですが、
雨が降ることによって大気中・そして雨中の汚れが壁に付着し、
その汚れに対してカビの胞子が付着し、カビが発生することがあります。
在来の住宅ですと軒が長く取られることによって外壁への雨が降り注ぐことが少ないのですが、
軒の長さが極端に短い場合は注意が必要です。
これから塗り壁をリフォームをするにあたりカビがひどいから塗り壁を検討される方には、
以下を注意していただくことが大切です。
1.天然素材は吸放湿性能が優れますが、カビを完璧に抑制する事は出来ない。
2.天然素材の中にはカビに強い素材もあるので、それらを検討する。
(漆喰か防カビ性能を持つ塗り壁素材)
3.室内の換気を定期的にし、風通しを良くして吸った湿気を放出することが非常に大切。
以上が塗り壁でカビを発生させない為のポイントです。
実際に塗り壁にカビが発生した場合、
状況によって異なるので一概には言えませんが、
カビ取り材で正面のカビを除去をするか、
既存の壁を除去して異素材を塗りなおす、
また、同じ壁素材にカビ防止剤を混和して塗るという方法がありますが根本的な解決にはならないので、
換気をこまめにするか除湿機の導入を検討するのがいいかもしれません。
カビの原因が目に見えない「胞子」である以上、なかなか原因を排除するのは難しいのですが、
事前に知って、そして説明しておくことにより万が一、カビが発生した時の対処方法も変わってくると思います。
また、材料メーカーが天然素材を売り出す際、
湿気を吸ったり吐いたりするという「吸放湿性能」が特徴として謳われることが多く、
天然素材を使用すればカビが生えないように受け取れる説明があるかもしれませんが、
ここで説明させていただいた話を少しでも思い出していただき、
施工後の環境を考えていただければと思います。
■2022.04.25追記
現在、珪藻土の上に塗ることで防カビ、抗菌効果を加えることができるトップコートが発売されています。
商品名:エアリーコート(四国化成)
アレルゲン不活化の成分が入った水性アクリルのトップコートです。
本来はスギ花粉やダニの死骸などアレル物質を不活化する効果を持ったものです。
アレルゲン不活化にプラスして防カビ、抗菌効果も併せ持っています。
新規に施工した珪藻土壁だけでなく施工から年数が経った珪藻土壁でも表面の埃を除去すれば施工することができます。
また、塗り壁だけでなく健全な状態のビニルクロスの上にも施工することができます。
珪藻土壁の更なる防カビ対策、花粉などのアレルギーの低減にご興味がある方にはおススメです。
今回の記事は、
一見、塗り壁、天然素材はカビが発生しやすいと受け取られてしまいがちですが、
全くそんな事はありません。
一般的なクロスよりも断然カビの発生率は低いです。
そして、湿気以外にも臭気対策、そしてランニングコストの長さなど、
非常に魅力的な素材であることには変わりは無いので
これからも塗り壁を候補に入れていただければと思います。
漆喰や珪藻土などの天然素材についてはこちらから
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最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
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