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未経験からでも左官職人になれるのか?
未経験からでも左官職人になれるのか?
投稿日:2022年09月16日 (金)
- 1見習い工から職人としてデビューするまでの流れ
- 1-1見習工から職人までのキャリアステップ
- 1-2職人に求められるスキルとは
- 2左官職人になるための研修
- 2-1一般的な研修
- 2-2原田左官における研修
- 3左官技能士の資格取得をすすめる理由
- 3-1一級と二級の違い
- 3-2資格を取るメリット
- 3-3資格試験の概要(受験資格、内容、形式など)
- 4異業種からの転職で職人になった人の事例
- まとめ
未経験からでも左官職人になれるのか?
左官職人は熟練の経験が必須であり、長い歳月をかけて修行をし、やっと一人前の職人となります。
そのような厳しい世界であるからこそ、未経験から左官の世界に飛び込むのはハードルが高く感じられるものです。
本記事では、そもそも左官職人は未経験からでも挑戦できるのか、見習工から職人になるまでの流れや研修の詳細、キャリアアップに有効な資格なども含めて詳しく解説します。
見習工から職人としてデビューするまでの流れ
左官職人になるためには特別な資格や免許、学歴などは一切必要ありません。
そのため、建設業界の未経験者が左官職人としてのキャリアをスタートするケースが珍しくありません。
では、そこからどのように一人前の左官職人へと成長していくのでしょうか。
見習工から職人までのキャリアステップ
未経験者が左官職人としてのキャリアをスタートするとき、はじめは見習工として就業することになります。
その名の通り見習いの立場であり、親方やベテランの先輩職人に付きながら技術を磨いていきます。
見習工は左官職人としての仕事内容を覚え、技術力を磨くことはもちろんですが、親方や先輩職人の作業をしやすいように、準備・サポートをするというのも重要な仕事です。
現場では先輩に付きながら「見て習う」ことを行い、仕事を覚えていきますが、準備・サポートをすることで仕事の手順や必要な道具、材料も併せて覚えていくことができます。
左官の仕事は多岐に渡るので、全てにマニュアルがあるわけではなく、現場で先輩がやっているのを「見て」「マネをする」ことで段々と仕事を覚えていく事になります。
見習工からキャリアをスタートし、左官職人として一通りの仕事ができるようになるためには、その人の適性や技術の習得度合いにもよりますが、4〜10年程度の修行が必要といわれています。
職人に求められるスキルとは
左官職人の仕事は幅が広いです。
セメントモルタルやコンクリートを扱う下地を作成する仕事から漆喰や珪藻土、時には塗ると金属のような表情になる装飾的な材料を扱う仕上げの仕事まで多岐に渡ります。
それらの技術を習得するのは決して簡単なことではありません。
例えば、作業内容をイラストや文章、動画などで解説しても、微妙な力加減やコテを入れる方向・角度、身体の動かし方などを理解することは難しいものです。
そのため、左官職人の多くは親方や先輩職人の作業の様子を見て、自分自身も作業をしながら徐々にコツを習得していきます。
左官の見習いさんに求められるスキルを挙げるとすれば、作業のコツを見て盗む観察力と、ひとつのことに打ち込むことのできる集中力といえるのではないでしょうか。
左官職人になるための研修
では、実際に左官の会社へ就職し見習工として働き出したとき、はじめにどのような研修が行われるものなのでしょうか。
今回は、一般的な左官店などで行われている見習工向けの研修内容と、多くの若手左官職人が活躍している原田左官工業所の研修内容を紹介します。
一般的な研修
一般的な左官店などで行われる研修は、上記でも簡単に触れた通り、親方や先輩職人に付きながらサポートを行い、作業の様子を見ながら技術を習得していくパターンが一般的です。
一般の企業ではOJTとよばれるような研修が中心であり、長い年月をかけてスキルアップを図っていきます。
憧れの親方がいる、この人からしっかり教わりたいなど自分が付きたい職人さんが明確な場合はこの方法が良いでしょう。
なお、左官職人になるためには未経験から左官店などへ就職する道以外にも、職業訓練校や民間の団体・協会などが実施しているカリキュラムへ参加する方法もあります。
左官職人の基本的な仕事内容や作業の基礎を一通り学び、その後左官店へ就職し見習工としてキャリアを積んでいく方も少なくありません。
原田左官工業所における研修
左官職人は長い期間にわたって厳しい修行を積んでいく必要があることから、途中で挫折してしまう見習工も少なくありません。
そのような中で、原田左官工業所では多くの若手人材の育成に成功しています。
その要因としては、習熟度に合わせた細やかな研修の体制が組まれていることが大きいといえます。
まず、入社後は「モデリング訓練」といって熟練職人の動きをビデオで繰り返し見ながら、作業の手順や動きをそのままコピーして覚えていきます。ビデオをお手本に見て習うことを行います。
(モデリング訓練とは中屋敷左官工業発案の左官育成方法で、左官の青年部を中心に全国で活用している育成方法です。)
右も左も分からない未経験者も、モデリング訓練を行うことで何からスタートすれば良いのかが明確に分かるようになります。
モデリング訓練の良いところは真似をするモデルが明確で、何を覚えれば良いか分かりやすい、会社で鏝を持って塗る経験をしていると現場に出た時に作業手順の基本的なことがわかっているという良い点があります。
また、左官の仕事は前述のように「見て習う」事で仕事を覚えていきます。
その時に会社で一度「見て習う」覚え方の研修を受けているので、現場に出た時にスムーズに先輩がやっているのを「見て」「習う」ことができます。
その後、4年間は現場で先輩と一緒に「見て」「習う」を繰り返しながら、時には一人で実践をして仕事を覚えていきます。
原田左官では4年間が見習い期間であることを明確にしています。
4年の見習い期間が終わり、5年目に入る4月の時に「年明け披露会」を開催し、見習工の終了を会社全員でお祝いします。
4年間というゴールが明確になっており、5年目で職人1年目として1ステップ上がることができるので働く側としても励みになります。
5年目以降は左官職人としてキャリアを積んでいき、より幅広く自ら仕事を覚えていく努力をします。
左官技能士の資格取得をすすめる理由
左官職人になるためには、特別な資格や免許などは必要ないと紹介しました。
しかし、左官職人としてのスキルや技術力を客観的に証明するために、さまざまな資格取得に挑戦する方もいます。
なかでも左官をやる上では「左官技能士」という資格は取得するべきものです。
一級と二級の違い
左官技能士とは、左官職人に求められる一定水準のスキルがあるかどうかを認定する資格です。
左官技能士資格には3級から1級までの3段階のレベルが存在し、実技試験もあります。
2級と1級の主な違いとしては、受験資格と実技試験の内容が挙げられます。
まず、2級の受験資格は2年以上の実務経験が求められるのに対し、1級では7年以上の実務経験とハードルが高くなります。
また、実技試験については、2級の場合は「壁の下地の塗り上げ・吹き付け下地の仕上げ」であるのに対し、1級では上記に、「天井・そで壁の塗り上げ・曲線形状の仕上げ」が加わっています。
特に天井の下地塗り上げは難易度が高いとされており、1級を取得するためには高度な技術力が不可欠といえるでしょう。
資格を取るメリット
左官職人にとって特定の資格や免許が必須ではないにもかかわらず、なぜ多くの職人が左官技能士の取得を目指すのでしょうか。
まず一番のメリットとしては、顧客に対して安心感を与えられることが挙げられます。
はじめて左官作業を依頼する顧客にとっては、「本当にこの職人・工務店へ依頼しても大丈夫なのか?」と不安に感じることも多いものです。
しかし、厚生労働省が管轄する一級左官技能士を取得していれば、一定以上の技術力は担保されているとみなされ、顧客は安心できます。
また、左官職人が将来的に一人親方として独立する際にも、資格をもっていれば仕事を獲得しやすくなるメリットもあるでしょう。
さらに、工務店や建設会社によっては、資格を取得することでさまざまな手当を支給しているところも多く、収入アップにつなげられます。
資格試験の概要
左官技能士の試験概要は以下の通りです。
【受験資格】
1級:7年以上の実務経験
2級:2年以上の実務経験
3級:実務経験が6ヶ月程度 または 職業訓練校の卒業者、在学者
【合格率】
1級:30%
2級:30%
3級:90%
異業種からの転職で職人になった人の事例
左官職人は未経験からの転職者も多いことから、建築や土木業界だけでなく異業種から職人になる方も少なくありません。
実際に、原田左官工業所には60名ほどの左官職人が在籍していますが、さまざまな業界からの転職を果たしています。
例えば、デザイン事務所に就職しアシスタントやデザイナーとして活躍してきた方は、そのデザインセンスを活かして意匠性の高い壁などの施工を得意としています。
また、出版業界から左官職人として転職を果たした方は、クライアントとの折衝経験を活かし、顧客との対応を得意としています。
まとめ
一人前の左官職人になるためには長期間の修業を経験し、親方や先輩職人の作業を見ながら学んでいく姿勢が求められます。
決して楽な世界ではなく、途中で挫折してしまう見習工も少なくありません。
しかし、なかには原田左官工業所のように、きめ細やかな体制を構築し短期間で効率的にスキルを身につけられるような研修を行っている企業もあります。
左官職人は最盛期全国で30万人いたと言われていますが、現在は6万人程度、近い将来3万人程度に減少してしまうと言われています。
そこには左官工法の採用が減少したなどの要因もありますが、左官は現在でも建設業においてなくてはならない仕事です。
特に仕上がりに影響する部分の左官工事では自分が塗ったものがそのまま仕上がりになるため、しっかりした技術を持った左官職人がこれからもっと必要とされることが予想されています。
左官業界は慢性的な人手不足に悩まされていることから、未経験者歓迎という企業も多いため、新たなキャリアの道として左官という職業を検討してみてはいかがでしょうか。
原田左官工業所では異業種から左官職人になった方も多く、平均年齢は37歳と若いスタッフが活躍している会社です。
新人講習やキャリアアップ講習などの社内研修も充実しており、これから左官職人を目指す方をしっかりとサポートしています。
最新技術を習得するために海外研修に行く場合もあります。
左官職人について興味があれば、先輩の声やどんな業務があるかなど、専用サイトにて紹介していますので、ぜひ以下よりご覧ください。
この記事を書いた人
有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ