見習いから職人になる日
見習いから職人になる日
今回のミライ通信は当社の「2024年度年明け披露会」(ねんあけひろうかい)についてお伝えします。
1.年明けとは
2.年明け披露会の意味
3.今年の年明け披露会
4.継続を目指して
1. 年明けとは
年明け(ねんあけ)とは当社独自の呼び方で、年季明け(ねんきあけ)と同じ意味を指します。
"年季とは「奉公する約束の年限」のこと、奉公を調べると「他人の家に雇われて、その家事・家業に従事すること。」”とあります。
(出典:デジタル大辞泉(小学館)より)
つまり、年明け=「他人の家に雇われて、その家業に従事する期間が終了した」という意味になります。
昔は我々のような職人稼業では見習いさんは住み込みで働き、丁稚(でっち)とも言われ、雑用等から入り、様々なことを教わり、時間をかけて技能を身に付けました。その期間が「年季」と呼ばれる期間で、見習い・丁稚のうちは給料ではなくお小遣いという名の給金をもらいながら、親方と寝食を共にして技能を身に付けていったと言われています。親方の家に住み込みで暮らしているので、親方次第で休みなどの自由も制限されることがあったようです。
年季が明けて晴れて一人前となると、「給料」がもらえ、ある程度の自由が与えられます。昔は見習いと職人の立場の差が大きかったので、年季が明けて一人前になるというのはものすごく嬉しいものだったそうです。
見習い期間は技能を覚える期間だから「お小遣い」をもらいながら暮らす、職人になると自分の技能を活かして自分で稼いだ「給料」をもらうという考え方です。
昔はそうやって技能を身に付けていったそうです。
今はもちろん、見習い期間も給料をもらいながら働いていますし、休みもしっかり定期的にあり、自由もありますのでご安心ください。
当社の年季という意味は、見習い期間は仕事をしっかり覚える期間というところを引き継いでいて、現代に合うようにしっかり働きながら、収入も安定し、技能を身につけていく期間という意味づけをしています。
職人と呼ばれる業界では、この年季明けの時に宴席を設け、年季明けの本人・親御さんも呼んで事業所全体でお祝いしていたそうです。現在は一部の大工、漆塗りの業界などでのみ、年季明け祝いの風習が残っているようで、続けているところは少ないようです。
それを当社では継続して行なっていて、この年季明けのお祝いのことを「年明け披露会(ねんあけひろうかい)」と呼んでいます。
2.年明け披露会の意味
年明け披露会を開催について当社ではこのような意味を持たせています。
・4年間の区切りを設けそのゴールを目指す
・会社のメンバーで盛大にお祝いする
・本人に職人になったという決意を持ってもらう
・親御さん、ご家族にもその姿を見てもらう
当社では年季を4年間としています。4年間は見習い期間として社員で働きます。5年目の春に年季が明けて、職人と呼ばれるようになります。職人になっても社員の職人として働いてもらうので、年季明けはワンステップ上がるという意味づけにしています。
一般企業で言えば主任のように役職が付いたようなイメージです。5年目になったら何でもできる、というわけではないですが、職人の1年生としてまた新たな気持ちで技能を磨いてもらえるようにしています。4年間頑張るという区切りがあれば、その期間をしっかり頑張れる、と考えています。これから何十年という職人人生の中で、まず5年目という一つの節目がある、その方が自分のキャリアプランがイメージしやすいのではないでしょうか?
そして、一つ目のゴールに辿り着いたことを会社メンバー全体で盛大にお祝いします。
4年間、様々な現場を体験して技能を身に付け職人になったことに対し、本人はもちろん、周りの職人さんたちも非常に喜ばしいことと感じてくれています。イメージとしては一人の職人をみんなで育て上げたようなもので、新しく私たちの仲間が増えたという感じです。そのため、会社メンバー大勢で盛大にお祝いしてあげるというのが恒例になっています。
本人に職人になった大事さを理解してもらい、左官職人として、よりしっかりした仕事を重ねていくことを決意してもらいたいので、盛大なセレモニーにしています。冒頭には左官組合が発行する年季明けの賞状の授与やお祝いの言葉、本人の決意表明をするという式典を行います。
そういった本人の晴れの姿を、ご家族もお呼びして見ていただきます。今年は遠くから東京に来て働き、年季が明けた方もいました。お母さんも社内の職人さんとのやりとりを見て、東京での左官の仕事に馴染み、しっかり一人前になった姿を見て安心したと思います。
その時に現場で活躍している様子を知ってもらうために記念の「フォトブック」を作っています。
我々の仕事は主に建築現場です。なかなか働いている姿を見せることはできません。それをこのフォトブックというものを通して、写真で仕事ぶりを見てもらうようにしています。4年間の成長を感じられる記念の写真集になっています。
3.今年の年明け披露会
今年の年明け披露会は男性・女性1名ずつでした。
2人とも先輩たちの支えの中で、努力をして技能を身につけていきました。
本人も会社メンバーもみなさん、楽しんでいます。
4.継続を目指して
当社は目的としてこの3つを掲げています。
・職人(従業員)を守る
・伝統技術の継承発展
・幸せの創造
左官という仕事を未来に繋げていくために、しっかり技術を身に付け、職人と呼ばれる立場になる。その職人を会社で守って、仕事をしやすい環境を作る。
左官という伝統の技術を受け継いで、発展させることで今の時代に通用する左官の仕事を行う。そうすることで自分たちの手で幸せを創り出せる、というのが当社の目的になっています。
左官を身に付け、自分たちで幸せを創造する。
それが技能職の生き方だと思います。
年明け披露会を毎年継続して開催することは見習いさん、職人さんの励みになっています。
「今年は〇〇さんのお祝いだね」というふうにみんなが参加したいと思える会になるよう今後も続けていきます。そうすることで微力ですが、左官という仕事を継続・次に繋げていくことになるのではないかと思っています。
これからも左官の仕事を価値があるものに発展させていくよう頑張りますので、原田左官の活動を見守っていただければ嬉しく思います。
この記事を書いた人
有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ
お問合せ先
有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533
左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」
発行元:有限会社原田左官工業所・株式会社エイチアール
発行責任者:有限会社原田左官工業所 原田宗亮
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