左官技術の魅力|伝統技術と現代での使い方
左官技術の魅力|伝統技術と現代での使い方
「左官」といえば、建築現場で活躍する職人をイメージする方も多いですが、具体的にどんな作業をしているのかまでは分からない、という方も多いのではないでしょうか。
時代とともに左官職人の役割は変化し、現代においても建築現場では不可欠な存在です。
そこで日本における左官の歴史を解説するとともに、左官職人はどういった技術をもっているのか、伝統的な工法から最新の工法、現代における左官技術の役割なども詳しくご紹介します。
<目次>
- ◆左官とは?日本の文化と歴史
- ◆左官仕上げの種類
- ・漆喰仕上げ
- ・土壁仕上げ
- ・モルタル仕上げ
- ・珪藻土仕上げ
- ◆伝統の左官技術を活用した新しい工法の事例
- ・プラスタル掻き落とし仕上げ
- ・アートパネル
- ・モルタル特殊仕上げ
- ・櫛引仕上げ
- ・リシン掻き落とし仕上げ
- ◆左官技術が目指す現代住宅の機能性向上と環境負荷の低減
- ・調湿・断熱効果などの自然素材の特性
- ・耐久性とメンテナンスのしやすさ
- ・住み続けられるまちづくり
- ◆まとめ
左官とは?日本の文化と歴史
左官とは、建物の壁や床、天井などに素材を塗り、美しく仕上げる職人のことを指します。
左官は日本の建築文化において重要な役割を果たしてきました。その起源は縄文時代にまで遡り、土や粘土を用いて住居の壁を整える技術を確立させました。
この基礎的な技術が左官の原型となり、その後江戸時代になると漆喰を用いた工法が開発されます。これは仕上がりの美しさはもちろんのこと、耐火性にも優れていたことから実用性の面でも評価され、現在でもさまざまな建物に採用されています。
明治から大正、昭和の時代になると西洋建築の技術が導入されはじめたこともあり、現在では床や壁の下地作りを担うケースも多くなりました。
たとえば、フローリング材やクロスを施工する際、下地に凹凸があると床がガタついたり、クロスの一部が浮き上がったりしてくることもあります。
このような事態を防ぎ、美しい仕上がりを実現するためにも左官職人による下地作りは不可欠な工程といえるのです。
また、西洋建築が主流となった現代においても、昔ながらの美しい外装・内装にこだわり、左官仕上げを行うケースも少なくありません。
左官仕上げの種類
左官仕上げと一口にいってもさまざまな種類があり、使用される素材も異なります。そのなかで代表的な仕上げの種類と、それぞれの違いについてご紹介します。
漆喰仕上げ
漆喰とは石灰(水酸化カルシウム)を主原料とした素材であり、つなぎの役割を果たす粘土や海藻などを混ぜ合わせて作られます。
日本では江戸時代から用いられてきた歴史がありますが、欧米でも漆喰は広く用いられており、それぞれの地域の気候・風土によっても原料は異なります。
冒頭でもご紹介した通り、漆喰は耐火性に優れているほか、調湿性や抗菌性という特性も持ち合わせていることから根強い人気があります。
ちなみに、日本の漆喰といえば白いイメージがありますが、混ぜ合わせる素材によってはさまざまなカラーバリエーションも選択できます。
土壁仕上げ
土壁とは日本古来の左官仕上げのひとつであり、各地域で採取される天然の素材が用いられてきました。
壁の表面はザラザラとした肌触りが特徴で、現代の住宅では主に和室の壁に用いられることが多くあります。
土壁という名の通り、本来は砂を原料として作られるものですが、昨今では美しい仕上がりと施工のしやすさから樹脂素材をベースとしたものも少なくありません。
土壁仕上げはあえて表面に凹凸を出したり、荒い仕上げにしたりすることで独特の風合いが感じられ、自由度の高い仕上がりを実現できる魅力があります。
モルタル仕上げ
モルタルとはセメント、砂、水を混ぜて作られる素材です。
耐久性・耐火性に優れデザインの自由度が高く、さらにコストも安く抑えられることから、さまざまな建物の建築材料として広く用いられています。
漆喰や土壁のように内装の仕上げとして用いられることもありますが、床や壁の下地としてモルタル仕上げが行われるケースも数多くあります。
珪藻土仕上げ
珪藻土とは、植物プランクトンが水底に溜まり化石化したものです。
左官仕上げの材料としては、珪藻土に石灰や塗料を混ぜ合わせたものが使用されます。
珪藻土には調湿効果や消臭効果があるため、ペットを飼育している部屋の内装などにも多く用いられます。
伝統の左官技術を活用した新しい工法の事例
いままでにご紹介した漆喰や土壁、モルタル、珪藻土などは定番の仕上げ工法であり、さまざまな建物に広く採用されてきた歴史があります。
一方で、左官技術は年々進化しているほか、多様なデザインへのニーズが高まっていることもあり、これまでになかった新たな工法も登場しています。
プラスタル掻き落とし仕上げ
漆喰のような白いプラスタルという素材にカラフルな陶器の破片を埋め込み、掻き落とし(表面に凹凸を出す工法)で仕上げた事例です。
無機質でシンプルなデザインになりがちな漆喰も、陶器を埋め込むことでデザインのアクセントになり、遊び心が感じられる仕上がりになります。
陶器は水を吸収する性質があるため外壁には不向きですが、内装にこだわりたいという方にはおすすめの工法のひとつです。
アートパネル
左官仕上げは建築現場で作業を行うのが一般的ですが、限られた工期に間に合わせるためには細かな意匠が施しにくく、ホコリや塵が舞う現場では表面に付着するといったリスクもあります。
そこで、デザイン性の高い左官をパネル化して施工する「アートパネル」といった工法もあります。まるで絵画や彫刻のような芸術性の高い左官仕上げも実現でき、一般的な内装とは一味違う雰囲気に仕上げられます。
モルタル特殊仕上げ
コンクリートの打ちっぱなしのような無機質でモダンな雰囲気に仕上げたい場合におすすめなのが、モルタル特殊仕上げです。
たとえば、通常のモルタルに黒粉を混ぜ合わせることで落ち着いた黒色の内装に統一できたり、櫛や刷毛、コテなどを使って表面に模様を入れたりすることもできます。
また、モルタルが固まる前に貝殻や玉石などを配置し、デザインのアクセントとして仕上げる方法もあります。
櫛引仕上げ
櫛引仕上げとは、素材が固まる前に直線的なデザインに仕上げる方法です。
その名の通り櫛を使って均等な間隔で線を引く方法もあれば、糸やフリーハンドでデザインする方法もあります。
シンプルな工程のため、一見すると簡単そうに感じられますが、実際には全体のバランスを見ながら慎重に進めなければならず、高度なテクニックとスキルが要求されます。
リシン掻き落とし仕上げ
リシンとは主に外壁の仕上げ材として使用されるもので、石や砂、セメント、樹脂などを混ぜ合わせて作られます。
これを掻き落としで仕上げることで、一般的なモルタルやコンクリートに比べて無骨な表情になります。
左官技術が目指す現代住宅の機能性向上と環境負荷の低減
左官技術は見た目の美しさやデザイン性の高さを左右するだけでなく、住宅としての機能性向上や環境負荷の低減といった重要な役割も果たしています。
調湿・断熱効果などの自然素材の特性
左官に使用される土や漆喰などの自然素材は、優れた調湿効果や断熱性などを有しています。
これにより、室内の湿度を一定に保ち、結露やカビの発生を防ぐ効果があります。また、断熱性が高い素材を用いることで、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住環境を実現でき、省エネルギーにも寄与します。
自然素材を活かすことは、左官の長い歴史の中で蓄積されてきた職人の知恵であり、合理的な工法といえるでしょう。
耐久性とメンテナンスのしやすさ
左官仕上げの壁は耐久性に優れ、適切にメンテナンスを行えば長期間にわたって使用できます。
たとえば、ひび割れや汚れが目立つようになったとしても、部分的な補修が容易であるため、リフォームのコストを抑えることができます。
住み続けられるまちづくり
一部の建材や内装材にはさまざまな化学物質が含まれており、適切に処理しないと環境への悪影響が懸念されるほか、アレルギーをはじめとした健康被害のリスクも否定できません。
左官仕上げには自然由来の素材が多く用いられるため、環境への負荷や健康リスクを最小限に抑えられるというメリットもあります。
安心して暮らせる環境を将来世代に引き継ぐ意味でも、左官技術は重要な役割を果たしています。
まとめ
左官技術は建物の内装を美しく仕上げたり、高い機能性を維持するために不可欠な存在です。
昨今では工期の短縮やコスト抑制のために、さまざまな工法が用いられるようになりました。
しかし、依然としてデザインや機能性にこだわるユーザーからの左官仕上げの需要は高く、漆喰や土壁などの魅力が再認識されつつあります。
住宅の新築やリフォームを検討しており、安心して暮らせる快適な環境に仕上げたいという方は、先人の知恵が詰まった伝統的な技術である左官仕上げもぜひご検討ください。
この記事を書いた人
有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ
お問合せ先
有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533
左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」
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