【左官の新しいカタチ】左官をパネル化!何が変わる?

【左官の新しいカタチ】左官をパネル化!何が変わる?

今回 は左官仕上げをパネル化することについてです。

  1. 1.左官 仕上げの良さ
  2. 2.左官仕上げ採用への課題
  3. 3.パネル化することで問題解決
  4. 4.左官パネル化事例紹介
    1.  4-1.リネアルテ仕上げ
    2.  4-2.塗り版築
    3.  4-3.テラゾ・ビールストーン
    4.  4-4.大きな櫛目のくし引き
    5.  4-5.漆喰
    6.  4-6.メカニカルファスナーでの取り付け例
  5. 5.今後の展開
  6. 6.左官アートパネル

左官仕上げの良さ

左官職人が鏝で塗った独特の質感、手仕事ならではの味わいが左官仕上げの良さです。
フラット仕上げでも模様付け仕上げでも人が作った手跡が残るというのが現代の左官仕上げの一番の良さではないでしょうか。

左官仕上げ採用への課題

手仕事の良さがある左官仕上げですが、採用いただくまでのお悩みの声として、例えば下記の点でお客様からお聞きすることもございます。

① 仕上がり にバラツキが出やすい
 人の手で仕上げていくため、職人さんによって鏝のタッチが微妙に違い、バラツキが出やすい。

壁を塗る2人の左官職人

② 作家性がある
 左官仕上げのすべてがそうとは限りませんが、その職人さん独自のものを作ることが出来ます。
 仕上がりに独自色が強ければ強いほど、その職人さんでないと同じ仕上げが出来ず、地域、場所が離れていても出張してまで仕上げてもらう必要が出てきます。
 左官を芸術の域にまで高めた挟土秀平氏や久住有生氏は左官業界の中でもアーティストのような存在でもあります。

③ 工期がかかる
 左官は基本的に湿式施工。水で練った材料を塗り広げ、乾燥して初めて仕上がりが完成します。
 乾燥までには2-3日間かかることもあります。
 また、素材によっては下塗り・上塗り・研磨・トップコートと何工程も重ねる仕上げもあるため、他の仕上げと比べて工期が掛かるものが多いです。

④ 傷が付きやすい
 左官仕上げは土や漆喰など自然素材ベースのものが多く、繊細で傷つきやすいです。
 普段の使用では問題ない強度ですが、工事中、工具や搬入物がぶつかると傷がついてしまいます。

⑤ 他の工事と同時進行で行いにくい
 左官は材料を練る場所を必要とし、他の工種よりも場所を取ります。
 また、壁面に塗り広げた材料は湿っているため、ホコリや木の粉が舞うと仕上がり面に付着してしまいます。
 そのため、スペースが狭い現場では他の工事と同時進行で行うことが難しいです。

このように左官仕上げは人と現場環境の問題により採用されにくい仕上げでした。
お客様がこの仕上げが欲しいと思ってもその職人さん、その会社独自の仕上げであれば、
その工期に間に合うか、来てもらえるか?予算が合うかなど問題にぶつかります。
短期間・短工期が求められる建築現場では「工期がかかる」、「取り扱いが繊細」、「他の工事と並行で進めにくい」左官仕上げは敬遠されがちでした。

それらの問題は今回お伝えする「左官をパネル化」して取り付ける方法で解決できる可能性があります。

枯山水模様の左官パネル

パネル化することで問題解決

左官仕上げを事前に工場等でパネルに施工。それを現場で取り付けることで仕上がりのバラツキや工期がかかることもできます。
事前に施工する工期を取っておけば同じ職人さんで仕上げていくことができ、仕上がりの品質が保てます。また、仕上がっているパネルを現場で取り付けるため、現場での作業時間を大幅に短縮することが出来ます。パネルの取り扱いにはある程度注意は必要ですが、乾燥状態のものを貼りつけていくので、他の工事との並行作業も可能です。

左官パネル化事例紹介

左官仕上げをパネル化した事例をいくつか紹介いたします。

リネアルテ仕上げ

波のような模様を搔き落として仕上げるリネアルテをパネルに施工。

下地の木パネルに専用材を塗って表面を掻いて模様を付けます。

リアネルテ専用材料を塗った状態の木パネル下地

表面を掻いてリアネルテ仕上げの波模様を付けている左官職人

このリネアルテ仕上げ左官パネルを現場でとりつけていただきました。

リアネルテ仕上げの左官パネル

塗り版築

塗り版築仕上げを円形のパネルに施工し納品しました。

円形の塗り版築の左官パネル

円形の塗り版築の左官パネル

円形の塗り版築の左官パネル

地層を切り出したような迫力のある仕上げになりました。

塗り版築の円形左官パネルの表面

テラゾ・ビールストーン

テラゾもパネル化することが出来ます。
工場でテラゾパネルを作成しておいて現場で取り付ければ、時間のかかるテラゾ仕上げも極端に現場工期が短縮できます。

重ねられたビールストーンパネル(ビールストーンの左官パネル)
(ビールストーンパネル)

指定した柄のオリジナルテラゾが出来る、特注品のタイルを作るような施工方法です。

タイルのように貼ったビールストーンパネルの壁面

タイルのように貼ったビールストーンパネルの壁面


こちらは白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネル。

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネル。施工途中の埋め込み工程

工場では水平面で施工しパネル化することで、垂直面にも取り付けることが出来ます。
通常壁面では出来ない大きな石のテラゾ仕上げが壁面施工可能になります。

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネル。施工途中の研ぎ出し工程

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネル

現場で取り付けて仕上がった写真がこちら。

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネルのテーブル

通常壁面では難しい大きな骨材のテラゾ仕上げが柱に施工できました。

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネルの柱

白い石と砕いた瓦を入れたビールストーンパネルの柱

 設計:デュアルタップ・凸版印刷
 施工協力:小野創建工業

パネル化することで大きい石を割って入れたテラゾも垂直面に施工しやすくなります。

手のひらサイズの大きな骨材

数種類の手のひらサイズの大きな骨材

数種類の手のひらサイズの大きな骨材を入れたビールストーンパネル

数種類の手のひらサイズの大きな骨材を入れたビールストーンパネル

壁面では施工できない模様もパネル化することで施工可能になります。

大きな櫛目のくし引き

大きな目のくし引き仕上げは壁面の場合、ダレ下がってしまうのでくし目の大きさには限界がありました。
このようにパネル化して製作したものを壁に取り付ければ、大きなくし目の仕上げも施工可能です。


動画:大きな櫛目の櫛引き仕上げ壁パネル【有限会社原田左官工業所】

大きな櫛目のくし引きパネル(櫛引き仕上げの左官パネル)

大きな櫛目のくし引きパネルで施工した壁面

パネルごとで上下にワザとくし目をずらした印象的な仕上げです。

大きな櫛目のくし引きパネルで施工した壁面

漆喰

こちらはちょっと分かりにくいですが、漆喰をパネルに塗った例。

白い漆喰の左官パネル

白い漆喰の左官パネル2枚

グレーの漆喰(ムラあり)の左官パネル

ムラあり模様のグレー色漆喰の左官パネル2枚

これを各20枚程度仕上げて現場で取り付けていただきました。

メカニカルファスナーでの取り付け例

左官パネルは薄いものであれば両面テープやメカニカルファスナーで取り付けられます。
取り付けの例を3つ紹介いたします。

左官パネルを両面テープで取り付ける様子

左官パネルを両面テープで取り付ける様子

左官パネルを両面テープで取り付ける様子

両面テープ式で壁に取り付けた左官パネル

両面テープ式で壁に取り付けた左官パネル


左官パネルをメカニカルファスナーで取り付ける様子

左官パネルをメカニカルファスナーで取り付ける様子

左官パネルをメカニカルファスナーで取り付ける様子

メカニカルファスナー式で壁に取り付けた左官パネル


左官パネルを取り付ける様子

左官パネルを取り付ける様子

左官パネルを取り付ける様子

左官パネルを取り付ける様子

メカニカルファスナー式で壁に取り付けた左官パネル

今後の展開

左官職人は大量引退時代に入り、減少しています。
ご要望いただいた仕上がりを納めるには左官仕上げをパネル化して現場で張り込んでいくというのも一つの選択肢かと思います。
パネル化することへの準備や現場取り付けの打ち合わせを綿密にする事など、他の準備は必要になりますが、大幅な現場工期の短縮も見込めます。
左官の良さは継ぎ目がなくシームレスに施工できる事ですが、残念ながらその点はパネル化することでなくなってしまいます。
今後、目地部分をぼかす工夫や継ぎ目を模様として見せるなど、左官の良さを活かしたままパネル化する方法を試行錯誤しながら作っていきたいと思っています。

左官アートパネル

今、左官は印象的な壁・見せる壁として施工することが非常に多くなっています。印象的な仕上げを見せる方法として左官のアートパネルを飾るという方法はいかがでしょうか?
ある程度のサイズであれば輸送もしやすく取り付けも容易にできます。

1. 表現 したい左官仕上げをカスタムメイドでリクエストしパネルで製作する。
2. 現地で取り付ける。

パネル化することで、自分の好きな左官仕上げを飾ることができ、遠方でも仕上げが可能、現場工期も短縮することが出来ます。
今までの施工例として版築模様、枯山水模様などがあります。
左官で仕上げた壁を切り取ったようなアートパネルです。


(左官アートパネル:版築)

塗り版築の円形の左官アートパネル

塗り版築の左官アートパネル


枯山水模様の左官アートパネル(枯山水の左官アートパネル)
(左官アートパネル:枯山水)

枯山水の左官アートパネル

枯山水の左官アートパネル

枯山水の左官アートパネル

現場で仕上げることが必然だった左官仕上げをパネル化してお手元に。

左官アートパネル
仕上げの一つの提案として是非、いかがでしょうか?
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この記事を書いた人
原田宗亮

有限会社原田左官工業所代表の原田。
二級施工管理技士/左官基幹技能者/タイル検定二級。
(一社)日本左官業組合連合会監事及び青年部の副部長。
左官の講習会やワークショップを企画・開催し、左官の啓蒙活動を行っている。
建設業界のダイバーシティを推進し、女性の左官業界への参加の手助けや新しい人材の採用育成に力を入れている。
著書に「新たなプロの育て方」㈱クロスメディアマーケティング
「世界で一番やさしい左官」㈱エクスナレッジ

お問合せ先

有限会社原田左官工業所
113-0022 東京都文京区千駄木4-21-1
電話番号:03-3821-4969 FAX番号03-3824-3533

左官のミライ通信「Sakan Concierge(左官案内人)」

発行元:有限会社原田左官工業所・株式会社エイチアール
発行責任者:有限会社原田左官工業所 原田宗亮
HomePage:http://www.haradasakan.co.jp/
メールアドレス:sakan@haradasakan.co.jp

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