人造石研ぎ出し仕上げについて
人造石研ぎ出し仕上げについて
人造石研ぎ出し仕上げについて(原田宗亮)
いつも原田左官のメールマガジンをお読みいただきましてありがとうございます。
本年もよろしくお願いします。
今回は最近人気が復活している人造石研ぎ出し仕上げについてです。
人造石研ぎ出し仕上げ(以下研ぎ出し)とは
主にセメントと種石を混ぜ合わせたものを塗りつけ、
硬化のタイミングをみて、砥石や研磨機、グラインダーで研ぎ出す工法です。
研ぐことで水磨きのようなピカピカな石の肌を出しますが、
ワックスなどを塗って更に光沢を出すこともあります。
仕様部位は床・巾木・手すりや流し・カウンター天板などに用いられます。
主材を塗りつけ、硬化した状態
これをグラインダーで研ぎます。
砥石やペーパーを荒いものから細かいものへ向けて数回に分けて研ぎ出し、
場合により水磨きをすることでツルツルピカピカに仕上げます。
正式名称は人造石研ぎ出し仕上げと言い、
文字通り「人が研ぎだして造る石」のような仕上げです。
縮めて「ジントギ」という場合もあります。場合により現場テラゾ(ゲンテラ)という場合もあります。
厳密には種石の大きさによって呼び名が違い、
中に入る種石の大きさが5-12mm程度の場合は「人造石研ぎ出し仕上げ」、
15mm以上の場合は「現場テラゾ仕上げ」となりますが、
最近ではこの区分けもあいまいになりつつあるようです。
大きい石が入っているほうが塗りつける作業も大変で、研ぐ厚みも増すので、費用も割高になります。
(写真:中屋敷左官工業のブログより)
最近では見る機会が少なくなってきている仕上げですが、
学校などの地流しや公園のコンクリート製の滑り台の滑る部分などに使用されています。
誰もが一度は見たことがある仕上げで、あの学校の流し、すべり台いうと想像できる方も多いと思います。
(写真:滑り台記録@すきま漫遊記より)
(写真:中里のひとり言より)
昔は人件費が安く、石材が高かったため、
この研ぎ出し仕上げを行い、石のような仕上がりを見せることが多かったと言われています。
実際に、丸の内や霞ヶ関などの古いビルの床や手すりは研ぎ出しや現場テラゾ仕上げが多いです。
(建て替えが進んでいて古いビルも少なくなりましたが)
今は無き秋葉原の交通博物館です。
手すりのワンポイントが非常に凝っています。
(写真:おたくま新聞 【建物萌の世界】第23回 万世橋の思い出 より)
特色はセメントの色と種石の色の組み合わせにより様々な仕上げが可能なところです。
参考ページ:日左連 現場テラゾー仕上げのテクスチュア
http://www.nissaren.or.jp/476
また、セメントまたはセメントモルタルに種石が多く混入するため、
セメントモルタルよりも格段に強度があり、
クラックも出にくいです。
仕上げのポイントは種石と種石を隙間がないようにしっかりと鏝で伏せ込むことです。
これをしないと研ぎ出しても石がまばらな状態だったり、気泡が多く入ってしまうなど、
きれいな状態に仕上がりません。
また、研ぎだすタイミングも重要です。
乾燥後、数日後に研ぎだす工程に入りますが、
中に入っている石の硬さや夏冬でセメントの硬化スピードも違うので、
そこは職人の経験が大事になります。
(今は研ぐ機械も発達していますので、多少、硬化が進んでも研ぎだせる場合がありますが、やはり経験が重要な部分ではあります。)
床に施工する例も多く、一般的には目地を入れます。
クラックが入りにくい仕上げですが、セメント系の仕上げですので、
主材が収縮するため、2~3mピッチで目地を取ることをお勧めします。
目地には金属としては柔らかい部類の真鍮製のものを用いることが一般的で、
塗りつけた材料を研ぐ時に真鍮目地も一緒に研ぐことで仕上げの高さを合わせます。
目地で分けて、色違いの研ぎ出しを施工することもあります。
研ぎ出し仕上げはデザインの自由度が高い仕上げでもあります。
塗りつける仕上げのため、3次曲面のものも作ることができますし、
ある程度の大きさのものであれば目地を入れずに仕上げることもできます。
そういった研ぎ出し仕上げの特徴が見直され、
カウンターや流しに使われることが再び多くなっています。
(上記3枚写真:中屋敷左官工業のブログより)
曲線でも施工できるため、こんな風にかわいい感じに仕上げることも出来ます。
研ぎ出し仕上げは研ぐ工程でものすごくホコリが出るので、現場で嫌われる工法でしたが、
現在では、ホコリ対策はものすごく改善されています。
昔は写真のようにグラインダー研磨で出たホコリを、掃除機で吸っていました。
実際には吸いきれずにホコリが俟っています。
かつては研ぎ出しをするときはこのようになってしまうため、
現場を完全に囲い、他の業者を入れずに研ぎだす必要がありました。
現在は研磨機に集じんカバーが付いており、そこからホースが出ていて掃除機に直結しています。
動画:研ぎ出し 集塵機使用
まったくホコリが出ていないのがお分かりいただけるでしょうか?
こんな風に今ではほとんどホコリを出さずに、現場を汚さず施工することが出来ます。
また、床においても、非常に大型の研磨機があります。
機械を操作する技術は必要ですが、
これを使用することで大きな平米数も今までより短期間に施工することが出来るようになりました。
動画:研ぎ出し 大型研磨機
集塵機が内蔵されているもの、掃除機をつなげるものなど種類はありますが、
これもまったくホコリが出ていないのをご覧頂きたいです。
職人の勘と経験が必要な仕上げですが、道具による進化も進んでいます。
職人の腕と最新の道具の組み合わせ、
古くて新しい研ぎ出し仕上げを是非、デザインの一つに取り入れてみてはいかがでしょうか?
最後に、素晴らしい昔の仕事をご紹介します。
埼玉にある遠山記念館の玄関床の研ぎ出し仕上げです。
亀甲模様の研ぎ出し仕上げが本当に見事。模様の一つ一つが中央に少し膨らんでいています。
当時の職人さんのこだわりを感じることが出来ます。
参考文献、HP
日左連
http://www.nissaren.or.jp/476
中屋敷左官工業株式会社
http://www.nakayasiki.co.jp/works/data/000154.html
中里のひとり言
http://nakazato.exblog.jp/23563785/
滑り台記録@すきま漫遊記
http://www.sukima.com/suberidai/044ooizumi.htm
おたくま新聞 【建物萌の世界】第23回 万世橋の思い出
http://otakei.otakuma.net/archives/2013051401.html
最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
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